2016年03月22日

植村直己『山を青春に賭けて』のおはなし。

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たまには本の話も。
『青春を山に賭けて』植村直己 なんてどうだろう。

ちなみに、今年は山奥で登山関係の仕事をしている予定。
自転車のブログを書いているくせに、登山関係の仕事をしている。
登山も好きだが、自転車のように詳しくはない。
山はただ山の中にいるのが好きなのだ。
街も嫌いではないけれど。


『青春を山に賭けて』は、アルゼンチン自転車旅行に向かう飛行機で読んだ。
正直な話、異国に行くというのは結構怖い。
特に南米なんて、治安があまり良い地域ではないので怖い。
プロの冒険家の人や、慣れている人はそういうことはあまり感じないのかもしれないけれど。
いや、多分、どんなに慣れても怖いものは怖いんじゃないかな。
やっぱり、自分が慣れ親しんだ土地じゃない、初めて行く土地っていうのは怖いんじゃないだろうか。

そんな不安を胸にいっぱい抱えながら読んだこの一冊。
実に勇気が出る。

植村さんは1941年-1984年の登山家。兵庫県出身らしい。
世界初の五大陸最高峰登頂者だ。
すごい。

青春を山に賭けては植村さんの自伝だが、実にすごい。
登山が好きで、次第に海外の山に憧れ、無理くり作ったお金でアメリカに行く。当時、日本でまともに働いていては海外登山の資金など作るのは難しかったので、要はアメリカに出稼ぎに行くのだが、勝手に働く不法労働である。これが見つかって、強制送還されそうになったが、山に登りたいのだ、と強く熱意を伝えたところ見逃してもらってヨーロッパへ。そこで、縁あってスキー場で働かせてもらいながら、世界の山をどんどん登っていく。
そして、世界五大陸最高峰登頂を成し遂げる。


これをアルゼンチンに向かう飛行機で読むと実に元気になる。
「お、オレなんて全然まともじゃないか。そもそも、船じゃなくて飛行機で行くんだから、全然、まとも。お金だって一応用意している!(結構ギリギリだったんだけど)」

海外を自転車で走るというのは、とても楽しい。
しかし、良い歳こいてそういうことをしていると、周囲の目も少々複雑なものもある。
自転車でパタゴニアを走ってみたいと思った時は、自分でもとうとう頭がおかしくなったのかと思ったほどだが、考えるほどに、どうにも若い間に行かなくては、仕事をするより、学校で勉強するより、どうしても自分の人生に不可欠なもののような気がして、考えるほどにますます自分の頭は狂ってしまっているのかなぁ、と不安になったりもした。

そういう不安の中で、植村さんの本はとても励みになったし、今でも励みになる。

今でも、時々、不安になることもある。でも、まあ、不安はあれど、楽しいことが待っていると思えば、まあ、良いか、人間、生きていて、全てを手に入れることは出来ないさ、何かを得れば何かを失う、それでも、自分が楽しいと思えることが出来ているのはきっととても幸福なことだ、なんて思って日々やっている。

確かに、植村さんも最期は山で死んでしまった。
山に興味のない人から言えば、山なんか危険なところに、しかも意図的に単独行というリスクを上げて、最後はあっさり死んでしまうなんていうのは、意味や価値の理解しがたいことかもしれない。
実際、山が好きでも、山で死なない方が良いと思う。
山が好きな人は、死なないで出来るだけたくさん山を登って、出来るだけたくさん楽しいことをしている方が良い。
山のことは詳しくはないけど、そう思う。
多分、自転車でも何でも同じだ。

でも、楽しいことをしようと頑張って、途中で失敗して死んでしまうのは、どうしたって仕方が無いことだと思う。

本音を言えば、楽しくないこともある。
日々、会社に行って、家に帰れば冷蔵庫があって、テレビにパソコンもあって、給料は多くなくとも、贅沢さえしなければ特に困ることもなく。奥さんなんかがいて、出来ればあまりケンカなんかもしないで、子供の学費のことなんかで少々悩んだり、苦労したりもしつつ、次第に大きくなる子どもを眺めて。
そんな生活に憧れることもある。

でも、全てを望むわけにはいかない。
偶然、そういうことも手に入る時がほろりと訪れるかもしれないから、諦めてはいけないにせよ。

自分にとって何かしら楽しいことが、それに向けて日々を生きていられる。
少々、社会の中では変わり種と見られることもあるかもしれないけれど。

本当の意味で自分のことを心底肯定してやれるのは、自分自身しかいない。
自分のことを愛してやるべきなのは、自分自身だろう。

少し湿っぽい話にもなったけれど、偉大なる登山家、冒険家の人生は、とても僕の心を勇気付けてくれる。

まあ、そんなこんな。

posted by じてぼん。 at 20:00 | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする